すぎやまこういち氏 『一票の格差は許されない』 (1)

 国民的テレビゲームであるシリーズ最新作「ドラゴンクエスト9」が、現在、絶賛発売中である。

 私自身、幼少の時代に「ドラクエ」シリーズで遊んだファミコン世代だということもあって、同シリーズのBGM作曲を一貫して手がけてこられた、すぎやまこういちさんに直接お話をうかがえる機会を得て、大変感激した。

 ただ、今回はテレビゲームに関するインタビュー取材ではない。

 すぎやまさんは「一票の格差を考える会」代表として、それぞれの有権者が持つ選挙権の不平等を改善するよう、国政などに向けて一貫して呼びかけ、最高裁の国民審査についてもアピールを行ってこられたそうだ。

 
 

 20090520155751

 

(以下、氏名表示につき敬称略)

 
 

■ 「一票の格差」、世界各国ではどうか?

 

―――――― すぎやまさんは、音楽家として、ずっと活動してこられているわけですが、その中で“一票の格差”の問題について取り組もうと思われたキッカケについて聞かせていただきたいと思います。

 

 すぎやま 「特に、キッカケというものは無いですね。 昔から、一票の格差というものを是正することは必要だと思ってきました」

 

―――――― はい。

 

 すぎやま 「参政権・投票権の平等ということが、民主主義の大事な基本だと思っていまして、世界のいろんな国の状況をみていますと、ごく大ざっぱにいえば、独裁政権と民主主義政権の対立という構図が、ずっと続いてきましたよね」

 

―――――― はい、続いています。

 

 すぎやま 「その昔でいえば、ソビエト連邦とアメリカの対立とか、現在では特に東アジアにおいては、日本と中国の関係という、こういった構図は、世界のあちこちにあります。私は常に民主主義サイドに立って物を考えていまして、独裁政権よりも民主主義政権のほうが、国民の幸せのインテグラル(総量)が大きいというふうに思っております」

 

―――――― はい。

 

 すぎやま 「民主主義を大切に思い、少しでも完成度を高めようという立場から、皆さんの幸せを考えるうえでは、一票の格差の是正が大切だろうと。これはもう、30年ぐらい前、ラジオのレギュラー番組を持っていたころから考えて、言い続けていることです」

 

―――――― そうですか。

 

 すぎやま 「熊井さん (※「一票の格差を考える会」事務局長・熊井 章さん) のほうからも」

 

 熊井  「はい」

 

 

 すぎやま 「中学時代の同級生で、ぼくの友人の中では一番長い付き合いなんです」

 熊井  「そうですね」

 すぎやま 「もう、付き合い60年超えるよな」

―――――― うらやましいです。

 すぎやま 「学校では一番成績がよかったんですから」

―――――― そうですか。学習面で。

 すぎやま 「そう」

 

―――――― 一般の有権者にとって、“一票の格差”の問題というものは、なかなかイメージしにくいと思うんです。 実際に何か、投票用紙に物理的な差があるわけではないですし、重い軽いというものを実感することは難しいわけですから。

 

 すぎやま  「私がとても実感するのはね、大都市圏では10万票ぐらい取って落選しているのに、ある地方では、2~3万票で国会議員になるとか、あるでしょう」

 

―――――― はい。 そういう話は、選挙のたびに毎回聞きます。

 

 すぎやま  「それはやっぱり、参政権の平等に反するでしょう」

 

―――――― そうです。「おかしいな」とは思うんですけれども、ただ、それが具体的な怒りとして湧いてこないという方は、世間で多いと思うんです。

 

 すぎやま 「具体的にいえば、完全に1対1ってことは、現実問題として無理だと思うけれども、諸外国の例をみると、だいたい最大でも1.2倍以内には収まってるよね」

 

 熊井  「そうですね。 経済同友会が調べたデータがあるんですが、ドイツとかいろんな国で、1.2~1.5倍ぐらいで収まっているし、また、収まらなくなると、その格差を迅速に直すという制度ができてるんですね」

 

―――――― そうなんですか。

 

 熊井  「アメリカでもそうですけども、選挙区の線引きを変えるなど、わりと柔軟に直しているんだけど、日本ではそれがなかなか直せなくて、そういう直しを嫌がる議員さんばっかりですからね」

 

―――――― そうですね。 ただ、アメリカの国会でも、下院はいいけど、上院では最大格差が70倍ぐらい開いてるじゃないか、だから大したことないと指摘する方もいらっしゃいます。

 

 熊井  「そう、ご承知のとおり、上院は各州ごとに議席が2つずつ、というふうに固定されていて、だから日本の参議院でも格差があって構わないという説を唱える方もいるけれども、私の考えでは、両者は性格が違っていて、アメリカは各州が独立国家みたいなものですから、結婚年齢とか学校制度なんか、州ごとに違いますでしょう」

 

―――――― はい。

 

 熊井  「アメリカの上院選挙は、国の大小にかかわらず各国ごとに1票があるという、国連に似ているんじゃないかと思うんです。それと日本の参議院はまったく違って、参議院なんて、ときには格差が3倍、4倍、5倍ぐらいになるときもあるでしょう」

 

―――――― はい。 現在も5倍ぐらいです。

 

 熊井  「それは問題じゃないの、と思いますけどね」

 

 すぎやま 「それで、その“一票の格差”の是正をするのには、行政制度が壁になっていることが大きいんじゃないかと思いますよ」

 

―――――― 具体的にはどういったことでしょう。

 

 すぎやま 「たとえば、ある選挙区を広げるため、Aという自治体だけじゃ足りないから、隣のB自治体の中に境界線を引いたときに、選挙管理の事務をどうするかという問題が浮上しますね。 選挙人名簿を作るときに、B自治体から半分の職員を、A自治体へ動員しなきゃいけなくなったりするんです」

 

―――――― ああ、その動員が面倒だという考えですか。

 

 熊井  「ひとつの都市の真ん中に線を引くなんてことは、ほかの国ではあるんですよ。でも、日本じゃ、できないに等しいですね」

 

 すぎやま 「自治体の現場での抵抗というのがあるんですよ」

 

―――――― そうなんですか。 それは私、今まで意識しなかったです。

 

 すぎやま 「自治体の中に線を引くと、官公労が抵抗したりということも起こりうるでしょうだから本音を言えば、現状のままで一票の格差を是正するのは、相当困難、かなり無理だろうという考えがあるんです」

 

―――――― はい。

 

 熊井  「逆に、そういった線引きができれば、わりと簡単に、格差を1対1に近づけられると思うんです」

 

 
 
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